● 2020.11.12 お知らせ

ACMゴードン・ベル賞のファイナリストに選出

SRCが進めている高精度流体シミュレーションに関する研究成果の一部がACMゴードン・ベル賞のファイナリストに選出されました。

ゴードン・ベル賞とは

ゴードン・ベル賞はアメリカ計算機学会(ACM: Association for Computing Machinery)が授与する賞で、高性能計算(HPC: High Performance Computing)の分野における世界で最も権威のある賞の一つです。毎年秋に開催されるHPC分野の国際会議である International Conference for High Performance Computing, Networking, Storage and Analysis(SC)にて、スパコン性能の世界一を競うTOP500と共に発表・授与されます。ゴードン・ベル賞は、TOP500が連立一次方程式を解く速度などを競うのに対して、より現実の成果、実用的かどうかを重視しているところに特徴があります。

2020年度は、SRCの技術開発部西川技術企画課長を含むグループの「Large Eddy Simulationを使った数値曳航水槽の実現に向けて」と題した論文はファイナリスト6件のうちの一つに選出されました。
他の5件は、材料分野、気象分野、宇宙分野、情報分野の計算でした。ゴードン・ベル賞は、カルフォルニア大学バークレー校のグループの分子動力学と機械学習を組み合わせた計算が受賞しました。

SRCでは2011年から東京大学生産技術研究所との共同研究を通じて、数値シミュレーションによる曳航水槽試験の代替に関する技術開発を行っており、これまでに「京」を使って数種類の船型に対して水槽試験と比較を行い、水槽試験と同じ精度の計算ができることを証明しています。
西川課長のグループは、スーパーコンピュータ「京」を使って1状態2日かかっていた、曳航水槽試験が代替できる精度を持つ高精度流体シミュレーションについて、計算コードを「富岳」に適した高速のものに改良し、1時間弱で計算できることを示しました。
水槽試験では一つの船型で数十種類の状態の試験を行うので、「京」の時代では一連の計測に対応する計算には時間がかかりすぎ、本当の意味での水槽試験の代替としての実用化は困難でした。今回の研究で、「富岳」を使うと一連の計算を数日で完了することができることがわかり、実用化により近づいたといえます。

今後への期待

数値シミュレーションのメリットは水槽試験と比較して、コストの低減や検討期間の短縮の可能性があるというところです。また、数値シミュレーションにより船の周りの全ての流れの情報が得られます。このため、これまで水槽試験による船体抵抗やプロペラに掛かる力の計測値だけを見て設計していた船型改良が、より理論的に効率よくできるようになるといったメリットがあります。さらに、今後、温室効果ガス削減のために、従来と異なる船型の開発が必要になった場合にも、効果的な船型や省エネ付加物の開発、水槽試験で効果を確認する船型の絞込みなどに数値シミュレーションの活用が期待されています。既に、数値シミュレーションによる温室効果ガス削減のための省エネ付加物の開発に関連した研究を受託しています。
SRCとしましては、数値シミュレーションの精度に影響する計算格子の生成等についてノウハウを積み重ねており、数値シミュレーションの適用可能性等について、皆様のご相談に応えて参りたいと考えています。

選考対象論文について

Toward Realization of Numerical Towing-Tank Tests by Wall-Resolved Large Eddy Simulation based on 32 Billion Grid Finite-Element Computation
10.1109/SC41405.2020.00007

著者名:
加藤千幸(国立大学法人東京大学生産技術研究所)
山出吉伸・永野勝尋(みずほ情報総研株式会社)
熊畑清*・南一生(国立研究開発法人理化学研究所 計算科学研究センター)
西川達雄(一般財団法人日本造船技術センター)

*)現所属は国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構

<本件に関する技術的なお問い合わせ先>
一般財団法人日本造船技術センター 技術開発部 技術企画課
TEL:0422-40-2824 FAX:0422-40-2827