● 2025.12.01 お知らせ

令和7年度 SRC技術セミナーを広島で開催しました

― 最近の海事政策の動向、DX・GXの最新動向について紹介 ―

一般財団法人日本造船技術センター(SRC)は、11月20日(木)に広島市内のホテル広島ガーデンパレスで「令和7年度SRC技術セミナー」を開催した。本セミナーでは、国土交通省海事局による最新政策動向の紹介を皮切りに、悔事業界におけるGX(グリーントランスフォーメーション)とDX(デジタルトランスフォーメーション)について業界の最前線で活躍する専門家から多彩な講演が行われた。

本セミナーには造船業界、海運業界、舶用機器メーカー、自治体、官公庁などから約150名の参加者が集まり、各講師の講演に耳を傾けた。

冒頭SRCの上園政裕会長があいさつに立ち、「本年は、GXとDXという、業界全体での持続可能性と競争力を高める重要なテーマを取り上げる。本セミナーでは、講師の皆様から業界の未来に向けた構想や取り組みに関する講演を行っていただくので、本セミナーの場を業界全体としての連携と革新の重要性を考える機会としていただきたい。」と挨拶を述べた。

基調講演は、国土交通省悔事局船舶産業課の吉田課長が、「最近の海事政策の動向」について講演を行ったが、業務の都合によりWEBでの講演となった。

講演は、我が国造船・悔運産業を取り巻く環境変化と、人手不足・国際競争力、カーボンニュートラル対応といった主要課題の政策動向を紹介。日米造船協力や、日本成長戦略会議における造船業の位置づけなど、最新の話題も含んだ興味深い講演であった。

 

技術講演では、下記5テーマについて、各界でご活躍の専門家の皆様及び当センターの職員が登壇した。

①日本郵船株式会社技術開発グループ 小大塚氏

気候変動と脱炭素化の流れを踏まえ、電気推進タグボート開発を通じたバッテリーハイブリッド推進の狙いと日本造船業が抱える課題へのアプローチを紹介。船主による上流設計、電化インテグレーションによる高度化と将来展望を示した。

②株式会社IHI原動機舶用事業部 元田副事業部長

アンモニア燃料機関を中心に、LNGデュアルフューエル機関、ハイブリッド/EVタグボート、バイオ燃料対応など同社の脱炭素技術を紹介。国際・国内のGHG削減目標を踏まえ、カーボンニュートラルに向けたエンジン開発と実証の取り組みを示した

③東京大学大学院工学系研究科 青山教授

造船工場の作業を「見える化」するモニタリングとAI活用の意義を紹介した。カメラやセンサーのデータからムダや負担の大きい作業を洗い出し、生産性と品質向上、働きやすい造船工場づくりにつなげる考えが示された。

④ 一般財団法人日本海事協会デジタルトランスフォーメーションセンター 長主管とNAPA Japan株式会社リードテクニカルコンサルタント 遥山氏(共同講演)

船舶の設計データと運航データを安全に共有し、造船所、船社、ベンダーが連携して新たな価値を生み出す「共有型デジタルツィン」構想を紹介。省エネ装置検討や積付最適化など、ユースケースの例が示され、その価値を共有する構想を示した。

⑤日本造船技術センター技術部 新郷技術部長代理

実海域における船舶の推進性能評価や運航データ解析の最新動向を紹介。GHG規制強化を踏まえた燃費改善の重要性と、OCTARVIAを活用した評価手法について解説した。また、SRCが中立的に支援できる取り組みや今後の展望を示した。

 

セミナー後には懇親会も催され、参加者同士の意見交換や情報共有が行われるなど、業界関係者の連携を深める場となった。

弊センターでは、今後も海事・造船産業の発展と技術者育成に貢献する取り組みを継続し、引き続き業界関係者のニーズに応える情報発信や技術交流の機会を提供していく予定である。