メガフロートQ&A
7. 法制
7.1 関係する法規

Q:メガフロートの関係する法規にはどんなものがあり、どんな課題があるか。

 メガフロートが大規模な人工地盤として様々な用途に対応できることから、関係する法律・規則は極めて多岐にわたります。また既存の法体系がメガフロートを想定していないことから法制上の課題も、多種多様です。メガフロート関係者は、法制上の課題を正確に理解し、適切に対応してゆかねばなりません。特に、現行法体系のもとでも、一般的登記を必要としないプロジェクトは推進可能であることを認識しておくことが大切です。

1)事前準備段階で関連する法規
 メガフロートの計画を具体的に進めるに当たっては事前に、関連社会計画との整合性・公共公益性の確認、環境対策・水面権利者との調整等がなされていることが必要で、国土総合開発法・都市計画法をはじめ、環境基本法・環境評価法・漁業法・各種社会資本整備計画等々が関連してくることになります。これは、従来の工法による社会資本整備の場合も同様で、特別な法律問題はありません。

2)「水域占用許可」関連の法規
 公共物である海域の一定区域を排他的に利用するメガフロートを建設する場合、「水域の占用許可」を得る必要があります。我が国の水域は、その用途により港湾区域・漁港区域・海岸保全区域・一般海域等に分けられていて、それぞれの法規(港湾法・港則法・漁港法・海岸法・国有財産法・条例等)により具体的な手続きが定められています。「水域の占用許可」については、許可期間のさらなる延長・更新手続きの簡素化等の課題はあるものの、現状では大きな制約要因とはなっていません。

3)構造・安全に関連する法規
 沿岸水域で不特定多数の人が利用する長期係留型の浮体構造物は、国土交通省海事局が係留船、港湾局が港湾施設、住宅局が海洋建築物というそれぞれの見方に基づき、その安全性について、それぞれの法規(船舶安全法、港湾法、建築基準法、消防法)の適用を義務づけています。事業者は現行法に定める手続きにもとづいて前広に関係部門と相談していけばよいことになっており、コスト・煩雑さ等の課題はあるものの多重規制が浮体構造物の建設の本質的ネックにはなっていないといえます。

4)管理・運営関連法規
 浮体構造物の維持・運営等に関する多重規制の問題(船舶安全法・港湾法・建築基準法・消防法等が適用)は運用ベースで改善されており、基本的なネックとはなっていません。又メガフロート上で展開される各種事業に応じて、さまざまな用途関連法規が適用されますが、これも、それぞれの法律を遵守する事が基本となり、一部(航空法・ICAO・廃棄物等)を除けば大きな問題はないと思われます。

5)登記・税・償却・資金調達関連法規
 メガフロート事業に民間の事業者が参画する場合、どのような権利が得られるのか、登記して第三者に対抗できるのかどうか、どのような税制が適用されることになるのかが大きな関心事となります(事業採算・資金調達・資産形成等との関連で)。上記の問題については現実的なニーズに応じて、同様な問題を有する橋梁、桟橋等の例の準用、新たな法律の制定など対応をすることになると思われます

7.2 水域占用許可

Q:水域占用許可の扱いは?

 浮体構造物を建設する場合、海域の一定区域を排他的に利用する事になります。しかし海域は公共用物であり、原則として 特定の人が排他的に利用する事が出来ないため、「水域の占用許可」を得る必要があります。我が国の水域は、その用途により港湾区域・漁港区域・海岸保全区域・一般海域等に分けられており、管理する法律も所管も異なっていますが、それぞれの規定にもとづいて申請手続を進めることになります。

1)港湾区域
 水域占用には、港湾管理者の許可を必要とすることが港湾法で定められています。港湾管理者は、公告水域では地方自治体の長(知事・市長等)、開発保全航路では運輸大臣です。水域利用多様化への対応として、最長10年までの占用期間と、水域占用の要請の高い港湾においては、港湾計画と整合した水域利用計画を策定することが定められ、水域の長期・計画的利用に向けて改善が重ねられています。

2)漁港区域
 水域占用には、港湾管理者の許可を必要とすることが漁港法で定められています。港湾管理者は、第一種漁港では市町村長、その他では都道府県知事。主務大臣は農林水産大臣となっています。占用許可の対象は 水域の占用が不可欠なものに限られ、漁業者の筏が一般的です。S47年の通達において・永久/半永久の工作物でないものに限り許可する事、占用期間を1年以内とする事が定められていますが、浮体構造物に対応できるような許可基準はありません(漁港区域に設置された浮体構造物例は見当たらない)。

3)海岸保全区域
 海岸保全区域は、護岸の整備や国土の保全を目的として、水際線を挟む陸域・水域の両側50m以内に指定されています。S31年に制定された海岸法では、海岸保全区域の占用に関しては水面を除くとしていて(7条)水域占用についての規定が無いのが現状です。

4)一般海域
 一般海域は、港湾法・漁港法・海岸法の適用を受けない海域を指します。一般海域の管理権が国にあるとする場合と 地方自治体にあるとする場合で適用法規が異なります。国にあるとする場合は、国有財産法に基づく国土交通省所管国有財産取扱規則により、地方自治体にあるとする場合は、各地方自治体が定める条例に基づいて管理が行なわれます。

5)運用の実態
(申請手続)水域の占用は、申請者が 申請書(目的・場所を記載)・利害関係人の同意書・図面等を 水域の管理者に提出し、それを基に水域管理者が許可の判断を下し、同時に、占用料金・占用期間が定められます。
(許可の判断基準)水域の管理者は、水域利用の不可欠性やそこ行われる事業の公共性・公益性を評価して判断を下します。
(占用期間と占用料)占用期間については港湾区域で最長10年が認められていますが、大半は1年・3年・5年で運用されていますが、メガフロートは100年耐用前提で考えられており、更なる長期化・更新事務の簡素化が望まれます。

7.3 多重規制の問題

Q:船舶安全法、港湾法、建築基準法、消防法の多重規制の問題について

(多重規制される浮体構造物)沿岸水域の一定の場所で、不特定多数の人が利用する長期係留型の浮体構造物は、国土交通省海事局が係留船、港湾局が港湾施設、住宅局が海洋建築物というそれぞれの見方に基づき、その安全性について、それぞれの法体系(船舶安全法、港湾法、建築基準法、消防法)の適用を義務づけています。建築基準法における建築物の定義は「土地に定着する工作物の内、屋根・柱・壁を有するもの」となっていますが、土地に定着する状態とは、単に陸上で土地に強固に結合された状態だけでなく、水面・海底等に定常的に桟橋や鎖で定着された状態を含むとされ、海上に係留された浮体構造物は、建築物の一種(海洋建築物)とみなされ、古くから建築基準法の適用対象とされてきました。旧建設省は、S44年の通達で海洋建築物に対して、建築基準法の適用と建築確認の手続きを指導し、S45の特定行政庁(沼津市)に対する回答の中でも、船舶を係留して海上ホテルとして整備する計画に建築基準法が適用されることを明確にしています。しかしながらS63年、多数の旅客が利用する浮体構造物の増加を背景に、船舶安全法施行規則等の一部改正が行われ、海上に係留された浮体構造物の多くに適用されることになりました。これに港湾法の規定も加わり、浮体構造物は法的に「面倒くさい」との印象を一部関係者に与えることとなりました。その後の運用改善に向けた関係省庁等の努力(H2の浮体構造物技術マニュアルが(財)沿岸開発技術センターによって、H3の海洋建築物の安全性評価指針が(財)日本建築センターによって制定され、混乱は相当程度改善)により、課題はあるものの(コスト・煩雑さ等)多重規制が浮体構造物の建設の本質的ネックにはなっていないといえます。特に規制緩和の流れの中で出されたH10・3の関係省庁の通達がねらい通りの成果が上がるよう運用されることを期待したいと思います。事業者は現行法規制の定めに従い、前広に関係省庁と連絡・調整を図ることが求められています(日本建築センターの評定も含めて)。今後はメガフロートの安全基準・技術基準を整備・充実し、関係法令毎の技術基準の差異から来る経済的過重負担を解消することが大切です。

7.4 メガフロートの法的位置づけ

Q:メガフロートの法的位置づけはどう考えればよいのか?(動産か不動産か・土地か建物か船か・登記できるか・担保になるのか・減価償却できるのか等)

 メガフロート事業に民間の事業者が参画する場合、どのような権利が得られるのか、登記して第三者に対抗できるのかどうか、税制上どのように取り扱われるのかが大きな関心事となります。現時点では、メガフロートが法律的に見て何なのか(土地か建物か)が整理されておらず、一般的な形での登記は出来ません。メガフロートの法的位置づけ明確化の必要性は、民間の事業者が何らかの形で、メガフロート事業に参画する場合に必須の条件となります。メガフロート実用化検討会(H8〜H10)等で研究が進められ、そこでは「公共物としての海にメガフロートの設置を行政が許可するその仕方が、メガフロートの法的位置づけを実質的に規定することになる。」というアプローチのもとで、次の三つのケースについて以下のように議論が進められました。

1)水域占用許可制度を適用する場合
 現存する多数の浮体構造物に適用されている水域占用許可制度をメガフロート建設にも当てはめようとする考え方です。しかしながら、現行水域占用許可制度は、公共物である海域の利用を暫定的な措置と位置づけており、その許可期間も短くいつでも許可が取り消せる制度となっていて、恒久的施設であるメガフロートを受け止める制度としては課題が多いようにも思えます。

2)国有財産法の直接的適用
 国有財産法によれば国の財産は普通財産と行政財産とに分けられていて、普通財産は、貸付・払い下げ、その上に私権を設定することが出来るが、行政財産は原則としてそれらが出来ないことになっています。海域は行政財産の一種である公共用財産に属すると考えられていますので、これを普通財産に組み替えることが出来れば、その貸与・払い下げ・出資等は可能であり、登記も含めてメガフロートの法的位置づけ議論は大きく前進すると考えられます。あるいは、行政財産のままでも例外措置として、特定の法人(日本鉄道建設公団・日本道路公団等)については貸与・地上権の設定が出来るので、特別法によって例えばメガフロート財団を設置し、行政財産のまま権利関係を整理していくことも考えられます。

3)公有水面埋立法の準用
 メガフロートは、海面を土地的に利用しようとするものであり、その意味で埋立と本質的に同じであり、埋立と並ぶ工法の一つと見ることも可能です。公有水面埋立法では「政令の定めるところにより、公有水面の一部を区画し永久的構造物を築造する場合にこれを準用する」とし、準用する場合として、水産養殖場と乾船渠の2つを規定しています。従って、公有水面埋立法を準用する場合、干拓と同様にメガフロートを位置づけ、施行令に超大型浮体構造物を追加すればよいことになります。

(注意)メガフロートの法的位置づけ議論は、民間事業者がメガフロートを使って様々な事業を営み、そこでの権利関係等を特例法によらないで明らかにしようとする時、さけて通れないテーマであると言えます。しかしながら、現実には財団(工場財団・観光財団等)を組成して抵当権登記を行うことは可能です。個別立法によるメガフロートプロジェクト推進の道もあり、さらに民間事業者が係わらないプロジェクト(公設公営プロジェクト)は現行法規の枠組みの中でも推進可能です。

7.5 税金

Q:メガフロートにかかる税金はどうなるのか?

 一般に、民間事業者又は第三セクターには事業者の所得に対する税金として法人税(法人税法)、所得税(所得税法)、地方税(都道府県民税・市町村民税・事業税)がかけられ、事業者が所有する不動産に対する税金として不動産取得税、固定資産税、特別土地保有税、都市計画税、事業所税がそれぞれかけられます。しかも税金は不動産登記の有無に関係なく、税制関係法例に基づく税務当局の判断によって課せられることになるので、メガフロートの税法上の位置づけについては税務関係機関の見解確認が必要となります。なかでも法人税関係では、メガフロ−トが減価償却資産として扱われるかどうか、扱われるとすればどのように扱われるかがポイントとなります。地方税法上ではメガフロートがどのような固定資産として整理されるかがポイントです。

1)法人税関係
 民間事業者が参加するメガフロート事業においては、浮体部が係留施設や防波堤などとともに減価償却資産とされることが、事業性を高める上で、極めて重要です。ちなみに、減価償却資産は、それぞれの耐用年数とともに大蔵省令の別表で細かく規定されており、メガフロートには別表1 が適用され、建築物的利用部以外を除く部分は、構築物とされる可能性が高いと思われます。構築物には、鉄軌道、発電所、ダム(耐用年数で80年で最長)、橋、桟橋などが含まれています。

2)地方税法関係
 浮体部が土地と見なされた場合には、土地としての固定資産税、都市計画税、不動産取得税、特別土地所有税が課せられますが、土地とされる可能性は高くないと言うのがメガフロート実用化検討会での議論です。なお、海底土地の所有権が認められた場合には、海底土地に固定資産税が課せられることになりますが、課税基準は、内陸の土地とは異なる基準となると思われます。ちなみに、和歌山県マリーナシティの水域占用料は、周辺地価の1/10をベースに算定されています。

7.6 現行法規制でも実現できるケース

Q:現行法規制でも実現できるケースはどんなものが考えられるのか?

 メガフロートの法的位置づけの議論と関連して、汎用的な法制度の整備を待たなくても、現行法制の枠組みの下でも実施可能なものは多く存在します。メガフロートの法制問題が過剰に大きく受け止められ、その解決まではすべてのプロジェクトが推進できないのではという誤解を避けるために、次の諸ケースについて確認しておきたいと思います。

1)公設公営のプロジェクト
 公共的な目的から、投下資本の回収が厳しくは問われず、民間の資金の直接的な参画(浮体構造物の一部についての売買も含めて)を必要としない施設―その多くは公設公営となろう―については、現行法制度の下でも実施可能です。このケースの実例として次のようなものがあります。

(1)「横浜港ぷかり桟橋」(H3年設置)
(2)「エストレーア/呉ポートピアランド」(H4年設置)
(3)「夢島・舞島浮体式連絡橋」(大阪南港に建設中・世界初の可動式浮体橋)
(4)「上五島・白島の石油備蓄貯蔵船」

2)民設民営の一部施設
 民間で計画され 資金調達されるケースでも、次のような場合は現行法制度の下でも実施可能です。

(1)「自家使用施設」
 電力事業者の施設、あるいは企業信用力のきわめて高い企業の施設に浮体構造物を利用するケースにおいては、当然 構造安全などの基準を満たすことが要求されますが、海域管理者の判断を得た上で、現行法制度の下でも実施していくことは可能です。事業者・企業の高い信用力が民間資金の調達を可能とし(コーポレートファイナンス)、個別物件毎の担保を必ずしも必要としない場合といえます。

(2)「高採算性・小規模・自己資金施設」
 きわめて採算性が高く、民間事業者が自己資金で設置できる小規模な施設であれば、現行法制度の下でも可能です。

3)個別特別法によるプロジェクト
 空港を始めとする超大型の、公共的なプロジェクトは、巨大な投下資本・低い採算性等から税制・財政上の支援が必要とされることが多い。海域利用の実例では、関西国際空港・東京湾横断道路などについては特別法を制定してこれらの課題に一括して対応しています。この方式であれば、現行法制度の枠組みのもとでメガフロートの建設を推進していくことは可能です。

7.7 補助金はもらえるか

Q:メガフロートを建設する場合、従来の埋め立てと同じように補助金がもらえるのか、不利になることはないか

 物流の基本的な枠組み・防災・環境・福祉等国民生活の基盤そのものを整備する事業や、経済発展を支える公共性・公益性の高い重要事業あるいは地域活性化事業等々に対して国が費用を直接負担したり、奨励的な意味を込めて地方公共団体に対して補助したり、起債事業と認定して資金調達を支援することが法律・規則によって定められています。これは事業の性格によって定められるているもので、その事業を推進する工法によって左右されるものではありません。従って、メガフロートを利用する事業が本来補助対象となるものであれば、当然補助金の対象となります。しかしながら現行の補助金支給ルールは実績のある既存工法をベースに整理されていて、実績のないメガフロートについて具体的にどのように適用されるかは明らかになっていません。この事がメガフロートの活用を考える関係者に大きな不安要因となっていることは事実だと思います。

(注意)この議論をスピードアップさせるためには、実プロジェクトの登場が一番効果的です。メガフロート関係者は知恵を絞って、メガフロートならではの魅力的なコンセプトを積極的に提案し、組合員各社の事業推進力・プロジェクト構築力をフルに発揮して、実プロジェクトの流れを作っていく事が必要です。

目次へ戻る
1ページ前へ
トップページへ戻ります
1ページ次へ